特定非営利活動法人
イーストベガス推進協議会

第5章「集団」 2.ゴミ拾い大会

結成されたトトカルチョマッチョマンズは、早速活動を開始した。当初のメンバーは、長谷川の雄和町の友人たちであり、その中には、長谷川と付き合っていた高橋美由紀もいた。伊藤敬や鈴木美咲、斎藤美奈子ら夢広場21塾・ヤング部会の同級生たちはコア・メンバーとして加わった。サラダ館でイーストベガス構想に反対した加藤のり子も、今までの遊び仲間を組織化したトトカルチョマッチョマンズには参加した。

彼等は4月には「花見大会」、5月には「山菜採り大会」を実行した。これらは文字通り花見であり、山菜採りであり、つまりは自分たちがやって楽しいことを行うというコンセプトに則った遊びだった。各イベントが終わった後は、必ず打ち上げの飲み会を行った。長谷川は、そんな打ち上げの場では飲みながらメンバーの間を回って、飽くことなくイーストベガス構想を説いた。

これらの活動に続いて、彼等は6月に「ゴミ拾い大会」を企画した。
秋田市周辺の住民が「空港道路」と呼んでいる道がある。雄和町にある秋田空港と秋田市を結ぶ県道であり、秋田市中心部から空港へ向かうためには主にこの道路が利用されていた。「ゴミ拾い大会」はこの空港道路の沿道のゴミを拾うというイベントだった。

沿道のゴミを拾うという行為だけからすれば、ごく普通のボランティア活動とも思えるが、このイベントもトトカルチョマッチョマンズのコンセプトに沿った活動であり、自分たちが楽しむことが主目的だった。つまり、一見ボランティア的な行為も花見や山菜採りと同じ遊びのノリで楽しんでやろうという企図だった。

ゴミ拾い大会開催日と決めた6月の休日、雄和町には雨が降っていた。それでも長谷川は予定通りゴミ拾いを決行すると決断し、トトカルチョマッチョマンズのメンバー十数人は、雄和町役場の前に集合した。
彼等が準備したものは、ゴミ拾いのための火ばさみ(ゴミトング)、スコップ、マスク、軍手、ゴミ袋、軽トラック、弁当やクーラーボックスに入れた飲み物、記録を取るためのカメラ、ビデオなどであった。ここまでは常識的な品物と言えるが、メンバーたちはそれに加えて、ラジカセ、横断幕、2本の旗も持ってきていた。
1メートル×2メートルの大きさの白い横断幕には、中央に大きく「ゴミ拾い中」の文字があり、その下には赤い字で「ほっといてくれ!」と書かれていた。2つの旗も手作りで「ゴミ捨て禁止」という文字や、太陽を表すデザインが書かれていた。

長谷川や敬、美奈子、のり子などトトカルチョマッチョマンズのメンバーたちは、町役場から空港道路に出て四ツ小屋駅近くのスタート地点まで移動すると、横断幕を掲げ、旗を振り回し、そしてラジカセから大音量でハードロックを流しながら沿道のゴミ拾いを始めた。それは空港道路を通行する人たちの目には異様な光景に映った。大きな横断幕や旗、大音量のハードロックももちろん異様だったが、それだけではない。彼等は雨の中、ビールを飲み、大笑いしながらゴミを拾っていた。

ただゴミを拾うだけではなく、旗を振り回したりハードロックを流したりしたのは、出来るだけ目立ち、周りの注目を集めたいという気持ちからだった。トトカルチョマッチョマンズは周囲にまだ存在を知られておらず、長谷川はもっと自分たちの存在をアピールしたかった。
派手なパフォーマンスの効果か、その日は休日にもかかわらず雄和町役場の広報担当の職員が空港道路まで取材に来た。

メンバーたちは、休憩を含め約2時間をかけて空港道路を移動しながら沿道5.8㎞のゴミ拾いを行った。その途中では、この大会の予定を聞いていたサラダ館のおかあさんが、おにぎりの差し入れに来てくれた。

町役場に近い目的地に到達してゴミ拾いが完了した時、軽トラックには、荷台いっぱいとまでは言えないものの相当量のゴミが貯まっていた。参加者たちは、それなりの達成感を味わい、ボランティアと言われている行為もやり方次第で楽しめることを学んだ。長谷川たちが意図した通り、目立つことができたのが一番の収穫だった。
彼等は、ゴミ拾い大会終了後、こうしたイベントの常としてサラダ館へ行き、打ち上げの飲み会を行った。