カジノ事業は甘くない 身辺調査、違反で資格剥奪
2014/8/15 23:46日本経済新聞 電子版
コナミはスロットマシンや大型のカジノ機器をラスベガス工場で製造する
カジノ解禁に向けた議論が進むなか、日本企業が関心を強めている。京浜急行電鉄は15日、カジノ運営への参入検討を発表。他にも参入をねらう企業は多い。ただカジノはギャンブルへの依存などマイナス面が指摘されるほか、事業運営でも難しい面は多い。海外のカジノ事業で実績のある企業の取り組みを探った。
年4千万人の観光客が訪れるネバダ州ラスベガス。空の玄関口であるマッカラン空港の近くに、コナミのスロットマシン工場がある。ゲームやフィットネスで知られるコナミだが、実は本場米国で10%強のシェアを持つスロットマシンの大手メーカーでもある。
■従業員も対象
「納品先のカジノごとにきめ細かく仕様を変えている」。カジノ事業を担うコナミゲーミングの木村良一副社長は話す。同工場の生産能力は最大で月間2千台程度。需要が旺盛で、2015年夏には敷地内で第2工場を稼働させる予定だ。
コナミのカジノ事業の営業利益は14年3月期で73億円。主力のゲーム事業に次ぐ収益源に育ったが、ここまでたどり着くのは容易ではなかった。
まず厳しいのがライセンスの取得だ。規制当局は犯罪歴がないか、役員や幹部の経歴はもちろん、家族の資産目録まで調べ上げる。期間は1年。費用の負担は企業側だ。
コナミゲーミングの坂本哲会長はネバダ州でライセンスを申請した際、先に取得していたオーストラリアの規制当局まで調査官がヒアリングに向かったという。「妻のサインまで求められることもある」(坂本氏)
従業員のチェックも厳しく、「誰でも雇えるわけではない」と木村副社長はいう。カジノ機器の工場で働けるのは犯罪歴や薬物使用の前科がなく、当局からライセンスを得た労働者だけ。カジノ業界から犯罪の芽を摘むためで、違反すればコナミのライセンスすら剥奪されかねない。
■一朝一夕では…
カジノを含む統合型リゾート施設に関心を示す主な企業 社名 事業内容や最近の動き コナミ スロットマシンの世界大手。米国、豪州に工場 日本金銭機械 紙幣識別機大手。今月、米カジノ関連企業を買収 フジテレビ、三井不動産、鹿島、日本財団 東京・台場でのカジノ建設案を政府に提出 ユニバーサル・スタジオ・ジャパン 大阪でのカジノ運営で主導役を狙う 京浜急行電鉄 横浜や東京・台場でカジノ運営参入を検討 グローリー 現金の払い戻し機を製造 セガサミーホールディングス 韓国のカジノ施設に研修生を派遣。カジノ機器も テックファーム 日金銭と提携し、カジノ向け電子マネーを開発 いつ抜き打ちで検査されるかも分からない。そのため個人情報や決算情報の資料を集め、規制当局の提出にいつでも応えられるように備えているという。坂本氏は日本のある上場企業から参入方法を相談されたが、「一朝一夕で参入できる市場ではない」と断言する。
コナミは1996年に参入を表明し、これまでに世界で365のライセンスを取得した。最近ではスロットマシンなどを管理、運用するカジノシステムにも力を入れる。どのマシンで誰が、いつ、いくら稼いだかを記録する仕組みで、税収計算や防犯対策の要になる。
海外では日本金銭機械も有力企業の一つ。スロットマシンなどに搭載し、偽造紙幣を見分ける識別機では北米で7割のシェアを持つ。今月にはカジノ用の印刷機器で北米トップの米フューチャーロジック社を約74億円で買収すると発表した。
スロットマシンでは稼いだ金を現金で払い戻さずにチケットを発行し、窓口や専用機で現金を受け渡しする。米社買収で、紙幣の識別機とチケットの印刷機器をセットで提供できる体制が整う。
新しいライセンス取得の手間暇に加え、セキュリティー意識が高いカジノ業界では確かな実績がものをいう。ATMの紙幣識別機に強い日金銭のように技術ノウハウがなければ参入は容易ではない。
ソース:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ14HCL_V10C14A8TJ2000/