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IR(統合リゾート)とは、どんな施設なのか 日本の魅力の発信基地として成長戦略に貢献

東洋経済オンラインで7月に入って「IRで始まるツーリズム革命 カジノが日本にやってくる!」というタイトルで、連載の特集を組んでいます。今回は第1回目。

 

IR(統合リゾート)とは、どんな施設なのか

日本の魅力の発信基地として成長戦略に貢献

小池 隆由 :キャピタル&イノベーション代表取締役
東洋経済オンライン: 2014年07月02日

マカオのコタイ地区にあるギャラクシー・マカオ(写真:IC zjj am – Imaginechina)

カジノを含む統合リゾート(IR)の実現に向けた動きが本格化してきました。6月18日には「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(IR推進法案)が衆議院で審議入りしたのです。

IRを実現するためには、現在は刑法で禁じられているカジノの運営を厳格な条件の下で許可し、カジノの利益を日本の成長戦略や社会の課題解決に最大限役立てる仕組み作りが不可欠です。IR推進法の成立は、この仕組み作りの第一歩です。本年の通常国会の会期末は6月22日であり、時間が限られていたことから、法案は成立こそしませんでした。しかし、IR推進法案は継続審議の扱いとなり、秋の臨時国会において優先的に議論されることになります。

一方、24日に政府が閣議決定した成長戦略「日本再興戦略」(改訂2014)にもIR実現のための議論を進める旨が記載されました。同じ24日には安倍首相がメディアのインタビューに対し、次の臨時国会でIR推進法の成立を目指す方針を明らかにしました。秋の臨時国会におけるIR推進法の成立は確実視されています。

IR推進法の成立は、政府、自治体、事業者の取り組みを正式に始動させるスイッチの役割です。このスイッチがオンとなった直後から、IRがオープンするまでの一連のプロセスが一気に動き出します。政府やIR議員連盟などの関係者は、2020年の東京五輪の開催までに複数のIRをオープンする意向を共有しています。

カジノを活用し、単独での事業化が難しい施設を運営

カジノを含む統合リゾートは、英語ではIntegrated Resorts(IR)と表記されます。IRはカジノのみならず、ホテル、劇場、パーク、ミュージアム、MICE施設などを一つの区域に含む統合施設です。

このMICEとは企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会、イベント(Exhibition/Event)の頭文字をとったものです。

IR施設全体のうち、カジノ部分は面積では5%未満に過ぎませんが、売上高では80%以上を稼ぎ出します。IRの収益メカニズムは、施設全体が集客し、カジノ部分が集中的に収益化、マネタイズする仕組みです。逆に言えば、カジノという強力な収益装置が存在するために、カジノ以外の施設(面積では95%以上)は、収支を必要以上に気にすることなく、十分にコストをかけて、最高のサービスの開発し、集客を拡大することだけに専念できます。

世界最大級のIRが現出

日本の大都市圏、すなわち関東、関西で想定されているIRは世界最大級の規模です。IRのカジノ以外の基本コンポーネントについては、2000室以上の規模の高級ホテル、数千席のエンタテインメント専用の劇場、展示面積10万㎡クラスのコンベンションセンターなどが想定されています。

例えば、日本を代表する東京のホテルの御三家(帝国ホテル東京、ホテルオークラ東京、ホテルニューオータニ)の部屋数は800~1500室ですし、都心の外資系高級ホテルは500室以下です。東京国際展示場(東京ビックサイト)は日本最大の展示面積を持ちますが、それでも8万㎡です。また、日本では都心部におけるエンタテインメント専用の大型劇場の必要性が指摘されています。

IRの中のカジノ以外の施設は、それぞれ大きな設備投資を必要とし、サービスの開発や運営が労働集約型であり、中長期の収入を見通しにくい、単独では事業化が難しい分野です。一方、それぞれ集客力が高く、日本の文化や産業の魅力の発信や訪日観光の促進を通じて、経済全体に大きな波及効果を生み出す分野です。まさに、日本が成長戦略として掲げるクールジャパン、ビジットジャパンに貢献する施設群です。それらを一カ所に統合し、収益力が高いカジノを組み合わせることで、これら単独では事業化が難しい施設群を成立させることが可能となるわけです。

クールジャパン、ビジットジャパンへの貢献が最も重要

IRは多面的に経済成長に貢献します。商業不動産の開発、運営事業と位置付ければ、当然のことながら、施設整備投資、雇用増加、訪問客の消費などが生まれます。経団連が発表したIR(一施設。都市近郊、大規模MICEを含む)の経済効果の試算によれば、施設整備投資は5600億円であり、経済波及効果については施設運営に伴うものが年間5800億円、施設整備事業に伴うものが9300億円です。

しかし、IRの経済効果は通常の商業不動産の開発、運営と同様に論じるべきではありません。IRはカジノを活用する事業であり、社会への重い責任が生じます。IRは日本の成長戦略、社会の課題解決に最大限、貢献すべきです。

IRの真の役割とは?

政府はIRの重要な役割、その政策目的をクールジャパン、ビジットジャパン戦略の推進と位置付ける方向です。クールジャパンとは日本の魅力(文化、産業)を世界に発信することにより、広範な産業の国際競争力を再強化する戦略です。ビジットジャパンとは訪日外国人観光客を拡大する戦略です。それぞれ政府の重要な成長戦略であり、二つの戦略は密接に関係しています。実際、IRの合法化を推進する国際観光産業振興議員連盟(IR議連)に所属する国会議員は、細田会長を筆頭に、IRがクールジャパン、ビジットジャパンに貢献することの重要性を繰り返し説明しています。

IRの経済波及効果を論じる場合、通常の商業不動産開発とは異なり、「クールジャパン、ビジットジャパンを推進し、世界における日本への関心が向上した結果、広範な産業の競争力が強化されたことによる経済波及効果」を重視すべきです。この効果は通常の商業不動産開発の経済波及効果をはるかに上回る規模となるはずです。

IRは日本産業界が主導すべき

IRの重要な任務はクールジャパン、ビジットジャパンの推進です。日本のIRは莫大な利益が確実視されます(関東、関西それぞれ1施設の合計の営業利益は年間3000億円レベル)。詳細な経済分析は次回以降で説明しますが、背景は日本の巨大な個人金融資産の存在です。

カジノは日本のとくに富裕層の個人金融資産の一部を吸い上げる事業です。日本にとって個人金融資産の蓄積は最大の経済資源であり、その一部を開発するわけです。また、IRは刑法で禁じられてきたカジノを活用する事業であり、一定の社会コストも生じます(勤労意欲減退、依存症、反社会勢力、青少年保護。むろん、これらに対しては厳格な対策が導入される)。

IRは日本の成長戦略、社会の課題解決に最大限、貢献すべきです。日本社会にコミットメントする日本産業界が責任を持って、IRの構築、運営を主導すべきです。

詳細は次回以降に説明しますが、日本産業界は確実にIR、大型カジノの構築と運営を主導できる力を持っています。一部の関係者の間には「日本産業界はカジノ運営の経験がない。ゆえに、外国カジノ事業者に依存せざるを得ない」という考えがあります。この考えは改めるべきです。「経験がない=出来ない」は日本の失われた20年間の考え方です。これからの日本の考え方は、「経験がない=新しい産業創出の好機。積極的に取り組む」です。


ソース:http://toyokeizai.net/articles/-/41492